ご近所さんの動物たち:ミツバチの「分蜂」とは?

ミツバチの世界では、「分蜂(ぶんぽう)」と呼ばれる特別な現象が見られます。これは、元の巣から一部のミツバチが新しい住処を求め移動する行動ですが、ミツバチたちにとって命に係わる大事な住処をどうやって見つけるのか、そして1万匹にもなろうかという大集団をどうやって無事に新しい住処に落ち着かせるのか。ミツバチたちの驚きの行動を詳しく解説します。
分蜂の始まり
ミツバチの巣が成長し、群れが過密になると、若い女王バチが誕生します。このとき、元の女王バチは新たな巣を作るために群れの約半分と共に移動を開始します。この行動が分蜂です。元の巣には新しい女王バチが残り、古い巣を引き継ぎます。こうして、一つの群れから二つの群れが生まれます。
探索バチの役割
分蜂では探索バチが重要な役割を果たします。女王バチと共に巣を離れた働きバチたちは、まず一時的に木の枝などから垂れ下がった蜂球をつくります。このとき、群れの中から「探索バチ」と呼ばれるミツバチたちが四方八方に飛び立ち、新しい巣を作るのに十分な大きさと安全性を兼ね備えた場所を探します。
探索バチたちは、木の洞や建物の隙間などを探し回り、条件の良い場所を見つけると巣に戻ります。そして、「分蜂ダンス」と呼ばれる特別な尻振りダンスを行い、仲間にその場所のすばらしさを伝えます。このダンスの活発さや振り付けが、場所の魅力を示す重要な指標となります。
新しい巣の選定
探索バチたちはそれぞれの候補地の魅力をダンスで訴えますが、そうやってどこが一番いいか長時間にわたって議論を続けます。つまり、それぞれの候補地に賛成するハチが分蜂ダンスを繰り返し、最終的に多くのハチが支持した場所が選ばれるわけです。こんなに小さなミツバチたちが集団意思決定という高度な社会性を持っているということは、自然の奥深さは想像をはるかに超えています。
ミツバチの集団意思決定
探索バチたちが尻振りダンスによる意思決定を行うにあたっては、リーダーによる仕切りも指図もありません。これを人間の会議に置き換えたら、議長なしに参加者がそれぞれ意見を言いたいように言っていながら、いつのまにか一つの結論に意見がまとまっているという、それこそ民主主義の理想のような会議が行われていると言えそうです。支配的なリーダーが、多くの選択肢を無に帰すような強引な判断をする危険性を、ミツバチたちは見事に解決しているのです。
私たちと分蜂
分蜂は自然界で普通に見られる行動ですが、実は私はまだお目にかかったことがありません。春から初夏にかけて、木の枝や建物の隅に分蜂群が集まっているのを見かけたら、そっと見守りたいと思います。ミツバチたちは攻撃的ではなく、彼らの行動は生態系において重要な役割を果たしていますから。
まとめ
ミツバチの分蜂は、群れの成長や繁殖を支える重要な行動です。女王バチを中心に働きバチや探索バチが協力し合い、新しい巣を作る過程は驚くほど組織的で効率的です。この現象を知ることで、ミツバチの社会性や自然界での役割についてさらに理解を深めることができます。私も分蜂を目撃したときは、ぜひ彼らの行動を静かに観察したいと思います。
彼らの小さな旅立ちは、まさにセンスオブワンダーです。